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9組のとある一日D                         7組〜グラウンド途中、主将の気持ち。






阿部を見てると、俺は時々

「コイツ実はすげぇバカなんじゃないだろうか・・・」

って、思うことがある。


普段は人一倍冷静で、めちゃめちゃ頭のキレるヤツなのに、
三橋のことになると周りのこと全部飛んじゃうんだ。


そこまでやれんのはある意味すごいし
バッテリーってそんなもんなのかな、とも思うけど

俺だってちょこっとピッチャーやることあっても
キャッチャーからそこまでしてもらったことなんてない
(と思う。田島は特殊例だし)


今だってそうだ。
いくら三橋が打たれてるからって、普通授業サボんねぇだろ。


しかも主将と副主将が、そろってサボって野球してたなんて、
見つかったらシャレになんないことぐらい
ちょっと考えたらわかることで・・・


でも、そんなこともどうでもよくなってんだろうな、多分。

つくづく、阿部は三橋のことだけ見てんだなぁ・・・
と、ほとんど感動的な気持ちになる。

そんだけ誰かに入れ込めるなんて、うらやましいような気もするし
実際、気持ちに忠実に行動できんのは、すげぇことだと思う。

(三橋の立場になって考えるとちょっとこえーけど)

三橋は三橋で、阿部のことを信じきってるみたいだから
これ以上の組み合わせってないんじゃないか、とも思ってる。

(阿部が短気だとか、 ほんとに気持ちが通じてんだろうか
 とか、気になる問題はいろいろあるけど)


そんな二人が俺らのバッテリーなわけで



きっとこれからも色々あんだろうな、って考えると
急にキリッと胃が痛む気がするけど・・・

それもけっこうおもしれぇかも、って思ってしまう自分が
いるんだよなぁ
――――


目の前で水谷と話す阿部は、いたって冷静で
「行こうぜ」と俺らに促してから、くるりと背中を向ける。

やると決めたら実行する男。

ちょっとくやしい気もするけど、実は結構嫌じゃない。


俺は、もう一度大きくため息をついてから
阿倍の背中を追いかけた。


(くそー、こうなったら、とことんやってやっからな)

俺は、きっと、これから卒業まで続くだろう
胃痛(と頭痛)への覚悟を決め、とりあえずは
今の状況が先生にバレないことを祈りながら
めいっぱいのダッシュでグラウンドを目指した。









とある一日終了です。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
おつかれっした!



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